高知の農家さんたちが知っている調味料「ぬた」とは?
「ぬた」という調味料をご存知でしょうか?
全国的には刺身や海藻に「酢味噌」を和えた料理のことを指しますが、高知県では調味料を指す言葉。葉ニンニクを刻み、白味噌やお酢を混ぜたもので、主にカツオやブリなどの刺身にかけて食します。
高知のぬたに欠かせない「葉ニンニク」はニンニクが成長し切る前に葉の部分を収穫したもので、鮮度が急速に落ちるため流通に出回ることがなく、農家さんたちが自分たちで育て食べることがほとんどです。
葉ニンニクがしっかり入った高知の「ぬた」を食べてもらいたい!その一心で研究と努力を重ねた株式会社アースエイドの嶋崎裕也さんに、お話を伺いました。
兵庫県淡路島出身の嶋崎さんが高知の「ぬた」に出会ったのは30歳の頃。
高知県須崎市に住む父方の祖父母の家に帰省し、食卓に上がった宇和島産のブリの刺身にかかっていたのが「葉ニンニクのぬた」でした。
刺身といえば、醤油やポン酢をつけて食べるのが一般的。見慣れない緑色のタレに戸惑いながら、ひと口食べてその味わいに衝撃。あまりの美味しさに作り方を教わり、自分で作るほどの虜になりました。
兵庫県で自動車メーカーに勤務していた嶋崎さんが再び「ぬた」に関わるのはそれから3年後。家庭の事情でやむを得ず須崎市に移り住むことになり、起業を考えた際、関西圏出身の自分が知らなかった高知の「ぬた」をもっと広めることができないかと思い当たりました。
高知の「ぬた」の最大の特徴である「葉ニンニク」。そのルーツは中国にあります。
葉ニンニクは四川料理を中心に重宝されている中華野菜で、高知に伝わったのは戦国時代。
朝鮮出兵時に土佐を治めていた長宗我部元親が持ち帰ったのが起源です。
なかなか市場に出回らない理由は、栽培方法と鮮度にあります。
葉ニンニクは冬物野菜。秋に種を植えて1月~2月ごろ、葉の栄養がニンニク自体に移ってしまう前に収穫時期を迎えます。
ニンニクにとって栄養の供給源である葉が断たれてしまうため、ニンニクは育たず、再び葉が育つこともないため、収穫は一度しかできません。
収穫後は急速に鮮度が落ちていくため、県外への出荷が難しく、商売として成立しないことから、農家さんが自分たち用に育てて食べるのみの「知る人ぞ知る」郷土料理となっていました。
どうしたら全国の人々に、自分が感動したおいしい葉ニンニクの「ぬた」を届けることができるか。研究を重ねた結果、嶋崎さんは葉ニンニクの自社栽培、自社加工を決意。
急速冷凍を可能にする液体凍結機を導入し、加工工場の近くに畑を作ることで、収穫から加工に1時間、加工から冷凍保存を2時間以内に達成する環境を作り上げました。
農機具も持たず耕作放棄地を整備する嶋崎さんを見かねた地元の農家さんがトラクターを貸してくれたり、誰もやったことのない取り組みに思わず心配した事業者さんがパッケージやレシピの考案をサポートしてくれたりと、周囲の人々の手厚いサポートも相まって、2013年に葉ニンニクの「ぬた」が完成。開発した商品は数々の食コンテストにて受賞を果たしています。
誰も取り組んだことのない伝統調味料の商品化。実現できたのは、周りの人の助けはもちろん、前職の経験が生きていると話します。
「特許の取得が仕事の1つだったので、顧客創造ができる新規性が高い商品を作るべきという考えがずっとあって。高知の「ぬた」も、冬場だけの家庭料理はあるけど、1年中、食べたい時に食べられる商品や技術はまだない。なら、作った方が有意義だって信じていましたね」
自らの経験と信念と共に完成した葉ニンニクの「ぬた」。
そのこだわりの一部をコッソリ、紹介します。
葉ニンニクを育てる上で、嶋崎さんが特にこだわった点が「有機栽培」です。
「ぬた」を作るために最も適したニンニクの品種はどれか、栽培方法は何が適切か。テストを始める際、周囲の農家さんからは「ニンニクは肥料をたくさん食う食物やから、化学肥料は多めに入れた方がいい。雑草もたくさん生えて大変やから、農薬や除草剤もあった方が収穫も楽」と農薬や化学肥料の使用を勧められました。
「農家さんにとって、農協に出荷する上で1番大事なパラメーターって、重さなんですよね。10キロやったら1万、 100キロやったら10万とか、1グラムでも重い方が収入になるわけです。しかも他の人の生産物も全部一緒になって販売されるから、自分がいくら美味しいものを作っても、あんまり報われない。自分も一次産業の農家さんだったら、農薬も化学肥料も使っていたと思います」
「けど、自分の元々のゴールは、葉ニンニクの「ぬた」を作ることで、調味料として大事なのは何よりも味。テストを重ねて、無添加にせんよりは、無添加にした方が美味しかった。僕が有機栽培を選んだ一番の理由はただそれだけです。」
全ては、自分が求める葉ニンニクの「ぬた」の完成のため。
葉ニンニクの畑の周辺にイネ科やマメ科の植物を育て、有機肥料として活用する。ビニールシートに小さな穴を開け、葉ニンニクにのみ陽光を当てるなど、農薬に頼らないために、非常に細やかな作業を積み重ねています。もちろん、「ぬた」を作る上で必要な葉ニンニク以外の食材も全て無添加食材という徹底ぶり。
前職で身を粉にして働いてきた分、農業を通して、豊かな食生活の大切さを実感した嶋崎さん。現在では有機栽培で得た数々の知見を活かし、地元の高等学校で食育の講座を開くなど、食を通した健康づくりの重要性も伝えています。
「農業のノウハウ、食品製造、営業活動と、創業してから知ったことがたくさんあって本当に得るものが多かったです。エンジニアとして会社員生活を続けていたら、給料も増えてお金は貯まっていたかもしれないけど、生活の質は今の方が10倍以上あると思っています」
今回にほんコッソリ良品店でお届けするのは、「かつおに合う葉にんにくぬた」に「完全藁焼き龍馬タタキ」をつけた『大賞W受賞鰹たたきセット』と、「ブリと肉に合う葉にんにく」に「荒木さん家のブリ」をつけた『ブリぬたセット』の2セットを1つにまとめた豪華なオリジナルギフトセットです。
高知家のうまいもの大賞2023にて最優秀賞を受賞した「かつおに合う葉にんにくぬた」。主原料にエキストラバージンオリーブオイル、カシューナッツなどを使用したあっさりとした洋風の味わいで、ムニエルやソテー、貝類など洋風の料理にもマッチします。
「完全藁焼き龍馬タタキ」は、高知県の株式会社ハマヤが販売している冷凍鰹。釣り上げた鰹を船上で急速冷凍し、国産の稲藁で丁寧に焼き上げるため、とろけるような食感と香ばしい香りが魅力。日本テレビ系列番組「秘密のケンミンSHOW」にて高知アンテナショップBEST5の第1位を獲得しています。
「ブリと肉に合うぬた」は濃厚なコクが特徴。麦味噌、純米酢、白ゴマを主原料としており、お肉やフライ料理、脂の乗った魚にぴったりです。
「ブリ藁焼きタタキ」は、株式会社みなみ丸が販売している冷凍鰤。高知県各所から仕入れた脂がたっぷりのった鰤を、こだわりの藁で1節1節丁寧に炙っています。真空包装後、急速冷凍をすることによって、鮮魚ならではの甘みと香ばしい藁の香りをそのままお届けすることができます。
ニンニクには殆ど含まれないカロテンやビタミンC、水溶性の食物繊維も多く含んでいる葉ニンニク。抗酸化作用、抗血栓作用、コレステロール抑制作用など健康を促進する成分も多く含まれており、嶋崎さんは「ほぼ毎日食べている」と話すほど。ニンニクと比べて辛みや臭みが少ない点も嬉しいポイントです。
須崎市は高知県のほぼ中央に位置する市。昭和29年に須崎町、多ノ郷村、浦ノ内村、吾桑村、上分村の5町村が合併してできた市です。
高知県内でも有数の清流である新荘川が流れ、1974年にはニホンカワウソの生息が確認されたことも。1979年の新荘川での観測を最後に、その後日本で目撃された事例はなく、残念ながら2012年に絶滅種に指定されました。このエピソードにちなみ生まれたキャラクターが高知県須崎市のマスコットキャラクター、「しんじょう君」です。
リアス式海岸を持つ良港であることから、魚貝類が豊富に獲れ、真鯛やカンパチの養殖業も盛ん。大正~昭和時代は交易の要衝としても栄え、今も港湾取扱貨物量は高知県全体の2/3以上を占めています。
南海トラフ地震の被害予測も相まって、人口の減少が続いていますが、2021年から産学官連携で「須崎市 海のまちプロジェクト」を立ち上げ。2022年に野外体験施設を開業、2026年までに魚市場や図書館複合施設を整備するなど、「海のまち」として新たな賑わいの創出を目指しています。
今回のギフトセットでは、鰹・ブリに合う葉ニンニクのぬたをピックアップしてもらいましたが、より気軽に食べられる料理で合わせるなら何がおすすめか嶋崎さんに聞いてみると、「アジフライもいいかもしれませんね」とコッソリ。
6袋と少し多めに入っている「ブリと肉に合うぬた」は、麦味噌を使用した和風の味わいでコクがあるため、トンカツなどの肉系のフライ料理より、魚系のフライ料理の方が合うそうです。
スーパーのお惣菜コーナーでもよく見かけるアジフライ。葉ニンニクのぬたで、ちょっとリッチなお夕飯にしちゃいましょう。
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