樅(もみ)ってすごいよ、と伝えたい。
樅100製造担当の杉田 修さん
「樅(もみ)に、頼る。」をコンセプトに、インテリアブランドを立ち上げた会社が東京都西多摩郡日の出町にあります。
ブランドを立ち上げたのは、なんと卒塔婆(そとうば・そとば)の製造会社。
なぜ、ブランドを作ったのか。なぜ、樅なのか。
株式会社田中卒塔婆WORKSの商品企画部 部長を務める工藤直喜さんに取材しました。
田中卒塔婆WORKS 代表の田中 康太さん
卒塔婆とは、お墓の後ろに並べて立てる木の板のこと。
仏塔の形を模しており、亡くなった人の冥福を祈って行う供養(追善供養)に用いられます。
西日本にて主に信仰されている浄土真宗では「他力本願、他力念仏」という死後すぐに極楽浄土に行けるという教義があるため、卒塔婆を立てる習慣はなく、あまり馴染みがない人もいるかもしれません。
卒塔婆に使用されている木は樅(もみ)。クリスマスツリーにも使われている木です。
1年を通じて葉を一斉に落とすことがない常緑針葉樹のため、キリスト教では永遠の命の象徴とされ、日本でも天高く伸びるさまや木の綺麗な白色から冠婚葬祭に用いられてきました。
各地の宗教で重宝されていた樅。
実は私たちの暮らしにも数々の恩恵をもたらしてくれる特性が秘められています。
樅は主に「防虫」「消臭」「抗酸」「調湿」の4つの特性を持っています。
防虫、消臭、抗酸は天然物質「フィトンチッド」の働きによるもの。また、針葉樹は広葉樹より細胞が大きいため多くの水分を取り込むことができ、調湿性に優れています。
そして木自体の香りがほとんどないため、食品との相性がよく、かまぼこ板や乾物の保管箱として使われてきました。
卒塔婆の製造を通して、その効果効能を古くから熟知している田中卒塔婆WORKSが立ち上げたブランドが「樅100(もみひゃく)」。まな板や米びつ、消臭剤など、樅の特性を活かした商品を続々と開発しています。
商品企画部の部長を務める工藤直喜さんは「樅ってすごいよ、と伝えたいんです」と語ります。
「木のぬくもりっていいよね、みたいな雰囲気は伝わりますが、木の効能って見ても触っても分からないので伝わりづらくて。自分たちの製品で、縁の下の力持ちである樅の効能を届けていきたいです」
「樅100」というブランド名の由来は「卒塔婆で100年続けた企業が、新たな100年を樅と共に歩む」という想いから。製品を100点開発することも樅100の目標です。
100年触れて知った樅の恩恵を、今度は生きる人々の暮らしへと届けていく。
次の100年へ、田中卒塔婆WORKSは人と樅が共に生きる新しい未来を模索しています。
樅の一大産地だった日の出町は、卒塔婆屋さんが多く集まり、今も日の出町で作られる卒塔婆は全国で60%以上のシェアを占めています。
田中卒塔婆WORKSもその1つ。「有限会社田中忠一塔婆店」として大正元年に創業した老舗企業です。
樅100は、都内の中小企業の商品開発・事業化を支援する取り組みに参加したことがきっかけで生まれました。工藤さんがこの取り組みに参加を決めた理由は主に2つあります。
一つ目は、特定の寺院に所属し、お寺を支援する「檀家」の減少により、運営状況が厳しい寺院が増えていること。寺院と深いつながりを持つ卒塔婆屋として危機感があったといいます。
二つ目は、樅の効果効能を社長や先輩方から教えてもらう傍ら、製造過程で廃棄されていく端材に次第と「もったいない」と感じるようになったこと。地元の小学校へ図工の授業用に譲渡もしていましたが、それでも余るほどでした。
「もう本当のきっかけって、そこからですね。これなんか使えないかな、これなんか使えないかなって。樅を知れば知るほど『何か作りたい』になっていきました」
おがくずをペット用の床敷材として販売するなど、次第に活用方法を広げていく中、2年ほど前に4代目社長を務める田中康太さんに新事業を提案。
「やっちゃえよ!」と快く応えてくれた反面、製造に携わる方々の反応は「あまり良いものでは無かったです」と苦笑いします。
未知の領域に対する不安が強く、「事務所にこもって何やってるの?」「本当に売れるの?」と疑問を抱く人が多かったとか。
しかし、製品の形が見えていくにつれ、関心を持つ人々も増えていき、今では展示会に出展する際、応援の寄せ書きをもらうほどに。
「当初と比べたら、だいぶ柔らかくなりました」と照れくさそうに話す工藤さん。
樅100というブランドも、少しずつ田中卒塔婆WORKSの一員として根差し始めています。
田中卒塔婆WORKSのパートさん 左から 川村 里美さん、石川 奈穂さん、仲田 富美子さん、石井 しのぶさん
今回、にほんコッソリ良品店で販売するのは「水切りが早い衛生的なまな板」に「バルサムファー精油」のお試しサイズをつけた2点セット。どちらも樅の特性を最大限に生かした商品です。
プラスチック製のまな板と比較すると、木製のまな板は適度な柔らかさがあるため、包丁が傷みにくく、跳ね返りも少ないため手が疲れにくいのが利点です。
まな板に使われる木材として主にヒノキ、イチョウ、ヒバなどが挙げられますが、樅もまな板に適した特性が多くあります。
針葉樹特有の調湿効果により乾きが早く、天然物質「フィトンチッド」の効果も相まって、カビや黒ずみが発生しづらいのが嬉しいところ。また、ヒノキやイチョウには特有の木の香りがしますが、樅にはそれがないため、食材や調理の邪魔をしません。
更に、水切りが早い衛生的なまな板のこだわりがもう1つ。
オリジナルの専用スタンドが付属されているのですが、まな板を斜めの状態で立てかけることができます。
角の1点に向かって水滴が流れ落ちていくので、垂直で立てかけるより効率的に水切りができ、衛生的です。角の部分もスタンドのステンレス部分から3mmほど浮いており、まな板にとって快適な環境を徹底的に作り出しています。
洗剤の使用は問題ありませんが、一般的な木製のまな板同様、漂白剤や食洗機の使用はできません。
長年使用していくことで汚れが気になってくるかもしれませんが、田中卒塔婆WORKSで削り直しのサービスを行っているので、また綺麗に使うことができます。
サービスを利用される場合は、樅100のブランドサイトへ直接ご連絡ください。
北米原産のバルサムモミを原料にしたエッセンシャルオイル。針葉樹に多く含まれるa-ピネンという成分は、爽やかな森林の香りをもたらし、リフレッシュ効果が期待できます。
また、抗菌効果があるため、咳など気管支炎のトラブルにも有効で、風邪対策につながります。ディフューザーや、入浴時の浴槽に1〜2滴ほど垂らし、香りをお楽しみください。
今回、にほんコッソリ良品店でまな板と一緒にお付けするのは1.5㎖のお試し版。
香りを拡散させるディフューザーとして、樅の木の一片も同封しています。こちらに精油を数滴垂らすことで、森の香りが広がります。ぜひ身も心も、樅に癒されてみてくださいね。
東京都西多摩郡に位置する日の出町。1955年に旧大久野村と旧平井村が合併する際に、日の出町の西にある「日の出山」に基づき、日の出の勢いで成長するようにという願いを込め、「日の出村」と名付けられたのが由来です。
樅の一大産地であったことから、江戸期以降卒塔婆の製作が盛んですが、日本で最も新しい大仏があるのも日の出町です。
2018年に曹洞宗宝光寺にて建立した「鹿野大仏(ろくやだいぶつ)」。高さは12mあり、座仏としては鎌倉大仏(約11m)より大きいというのですから驚きです。
今から約50年前に先代住職が仏教の普及を目指し、建立を決意。亡くなった後は現住職の方が意思を引き継ぎ、東日本大震災によって大勢の人々が亡くなったことから供養の思いも込めて建立を早めたとのことです。
仏教との縁が深い町ですが、古くから伝わる民俗芸能もあり、雨乞いや悪霊退散の舞である「鳳凰の舞」は「風流踊」の一つとして、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。
日の出町では、人々の祈りが形になったものが今もなお脈々と受け継がれています。
今回取材した商品企画部の工藤 直喜さんと、田中 康太さん
日の出町で幕末頃から始まった卒塔婆づくりですが、樅の伐採後は杉が植えられました。
現在の日の出町では樅は採れず、国内全体で見ても、産業用に必要な量は確保できない状態です。
「本当に長い年月が必要ですけど、樅100をきっかけに地域の雇用促進や樅の有効活用が進んでいって、いつか、日の出町に樅の木が復活できたら」と工藤さんは話します。
次の100年を見据える田中卒塔婆WORKS、その先には日の出町の未来への希望も込められていました。
商品規格 |
|
---|---|
商品について |
|
ショップ情報 |
|