ホタテの貝殻はどこへ行く？株式会社Shelltasの目指す未来
日本で最も食べられている貝、ホタテ。
その貝殻は水産加工場や家庭にて年間約20万トン廃棄され、
貝殻埋立地では悪臭や地下汚染問題へと発展しています。
この問題の解決を目指し、ホタテの貝殻を使用した洗剤や肥料など様々な商品が近年開発されていますが、
貝殻のとある「欠点」を克服した会社が東京都大田区にあります。
コッソリ良品話
「ホタテ貝殻焼成パウダー」という商品をご存知でしょうか？
ホタテの貝殻を加熱・粉末にしたもので、水に溶かすと強いアルカリ性になることから、除菌・消臭剤として販売されています。
しかし、焼成パウダーは水に溶かすと発熱するという特性があり、取り扱いに注意が必要なもの。その欠点を克服し、発熱せず、皮膚への刺激性も低い安全な水溶液の開発に成功したのが株式会社shelltasの「SeaFect」です。
なぜ水溶液の開発を目指したのか。開発の経緯をShelltasの取締役を務める武下朗弘さんにうかがいしました。
ホタテ貝殻焼成パウダーは、昔から主に農業で土壌改良のために使用されていましたが、水に溶けにくいという性質から活用方法が限られており、研究が進んでいない分野でした。
しかし、Shelltus代表の_田浩一さんが、課題さえ乗り越えれば、ホタテの貝殻には大きな可能性に満ちていることを発見。論文やエビデンスが少ない中、日夜粉まみれになりながら試行錯誤した結果、二次焼成の方法を確立。大学や他研究機関とともに研究を進めてきました。その結果、世界基準の３倍近くもの溶解度に仕上げ、除菌力の向上・pH維持に成功しました。
約6年の研究を経て、SeaFectの原型となる水溶液が完成。溶解度や発熱問題の解消だけではなく、強アルカリ性にも関わらず、皮膚への刺激性が蒸留水以下であることも判明しました。
現在はSeaFect自体の更なるアップデートを目指して日々邁進中。
今後の目標について武下さんに聞いてみると、「今は雑貨という扱いですが、農業や医療など専門的な領域で働く人々も支えられる商品にしていきたい」と力強く答えてくれました。
コッソリ良品話 Seafectに使用されているホタテの貝殻は、ミネラルが豊富なオホーツクの深海から採れたものです。ホタテの漁獲量は北海道が国内1位。養殖や加工業が盛んな地域が多くありますが、昭和50年代には埋立地に溜まった貝殻による悪臭の発生や、一部残ってしまった内臓による土壌や地下水の汚染が指摘されていました。
2000年6月にゴミ問題の解決を目指した「循環型社会形成推進基本法」が施工されたことにより、貝殻の有効活用を目指した研究とリサイクルの取り組みが拡大。除菌・消臭剤など衛生関連商品や、コンクリート部材、飼料・肥料など多種多様な商品が開発され、リサイクル率は高水準になりました。
しかし、2021年以降、貝殻の再利用を目的とした海外輸出が鈍くなっていることから、再び廃棄が増える懸念が。新型コロナウイルスの感染拡大による衛生意識の向上から、天然由来で高い除菌能力を有するホタテ貝殻焼成パウダーに注目が集まっています。
近年日本のプロモーション効果もあり、海外で日本産ホタテの人気が上昇中。国内だけでなく、世界へホタテを届けるためにも、地域や自然環境にやさしい循環型社会の形成が今後さらに重要になっていくと考えられています。
コッソリ良品話
ホタテ貝殻の発熱問題を克服したSeaFect。その使い道には、どのようなものがあるのでしょうか。
ウイルスには、エンベロープという脂溶性の膜を持つもの(インフルエンザウイルスやコロナウイルスなど)と持たないもの(ノロウイルスなど)の2種類があります。
膜を持つウイルスにはアルコール除菌が有効ですが、後者には次亜塩素酸ナトリウムでの除菌が有効と、全てのウイルスに対応するには2種類の除菌剤が必要でした。しかし、強アルカリ性のSeaFectはどちらのウイルスも除菌することが可能です。
多くの細菌やカビは、pH2~pH8.5の酸性から中性の環境で育ちます。そのため、強アルカリ性のSeaFectは除去効果が高く、臭いの原因となる細菌やカビの繁殖を抑えることができます。また、水溶液のため濡れた箇所や汚れた場所での使用でも効果を発揮し、有効成分が残るため、防カビにも効果があります。
油汚れの成分である脂肪酸(弱酸性)は水酸化ナトリウム(強アルカリ)と反応することで、脂肪酸ナトリウム＝石鹸になります。油脂を分解するだけでなく、石鹸効果もあるのでその他の汚れも一緒に洗い流してくれますよ。
皮膚への刺激もなく、無色無臭。ドアノブやスイッチなど手が触れやすい場所や、キッチンの調理器具、衣類や靴といった臭いの気になる場所など、衛生面のお悩みができやすい場所で幅広く使用できます。
ただ、アルカリ性に弱い素材(銅、アルミ、真鍮など)に使用すると、変色する可能性があります。まずは影響の少ない面に少量お使いいただき、確認することを忘れずに！
コッソリ良品 株式会社Shelltasがある東京都大田区。昭和22年に当時の「大森区」と「蒲田区」から1字ずつ取って命名された区で、東京都23区に含まれています。
田園調布といった閑静な住宅街が広がるエリアがある一方、羽田空港を有し、町工場が集まっていることから「中小企業のまち」とも呼ばれる地域です。
また、臨海部周辺には、「黒湯」と呼ばれる黒褐色のお湯が湧き出ることから、都内で一番銭湯が多い区。海底に沈む地層から湧出しており、古代の海藻や貝殻が何億年もかけて分解され、有機物フミン酸という成分になり、源泉に溶け込むため黒色になります。空気に触れても劣化せず、ミネラルが豊富で「美肌の湯」と言われています。
品川区との境には大森貝塚という縄文時代の貝塚遺跡が発見されたという歴史を持っており、日本初の化学的な発掘調査が実施されたことから、「日本考古学発祥の地」とも呼ばれています。
海から届く贈り物が歴史や生活に溶け込む大田区。そんな大田区で、海がもたらす恵みをサステナブルにより多くの人に届けるために、Shelltasは研究と開発を続けています。
コッソリ良品
Shelltasの武下さんに、SeaFectでこっそり教えたいことをお聞きすると、「実は肌荒れに悩む方にもおすすめなんです」と教えてくれました。
「カラー剤による手荒れで悩んでいる美容師さんに使用してみてもらったところ、刺激がなく評判がよかったんです。花粉の季節、肌荒れにお悩みの人におすすめです。ティッシュに塗ってやさしく拭いてみてください」
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| 商品について |
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2023/06/30
SDGsに関心があるので、もともと廃棄していたものを利用するという本品のストーリーに感動して利用し始めました。
ホタテ貝殻の成分って、もともと知られてはいたのでしょうけれどなぜあまり利用されていなかったのかというと、それにはやはり理由があるわけで…取り扱いが難しいのですね。
そこを技術力と情熱で商品化させてしまったこのメーカーには脱帽です！
我が家では玄関に常備されていて、手指の除菌と靴の消臭に重宝しています。
